後期研修医科 カリキュラム眼科

目標・理念

大平明弘教授の理念は「人を育てる」ことに集約されます。臨床・研究・教育に主体的に関わることのできる医師の育成を目指しています。
島根県という地方においても、幅広くかつ高度医療を実践して地域医療に貢献すると共に、「探究心」を持ち続け、世界に通用する臨床・基礎研究を目指しています。

診療科概要

当院の眼科は網膜硝子体疾患を中心に,緑内障,白内障,腫瘍性疾患,ぶどう膜炎,斜視・弱視,角膜疾患等,多様な疾患の対応できるよう体制を整えています。

設備としては3次元網膜光断層装置,超音波検査装置,共焦点レーザー検眼鏡,インドシアニングリーン蛍光眼底撮影装置,新しい原理の眼圧測定装置,種々の視野測定装置,黄斑色素密度測定装置,光線力学療法装置と言った国内でも先端レベルの機器を有しています。

手術例は網膜硝子体手術,緑内障手術,難度の高い白内障手術が大半を占め,高度な眼科マイクロサージェリーを研修することができます。重度の増殖糖尿病網膜症,網膜剥離,増殖硝子体網膜症に対しては手術術式の改良と術後管理の徹底により全国レベルを超える治療成績を残しています。また黄斑円孔,網膜前膜に対しては極小切開硝子体手術による低侵襲手術を行っています。緑内障手術では濾過手術と非濾過手術の複数の術式を用いて個々の患者に適した手術治療を選択することで,より合併症の少ない手術を目指しています。その他,眼部腫瘍に対する手術・化学療法・放射線治療や難治性ぶどう膜炎,角膜疾患等,難症例が集積する大学病院でしか経験できない症例を,多く研修することができます。

卒後研修医には早期育成を目指し,3年目で白内障手術が完遂でき,ほとんどの手術助手が務まるよう,積極的に手術指導を行っています。大学病院は,ともすれば上司のみが執刀を行い,新人は手術が経験できない為に関連病院に出され,一人指導医の元で研修を積むという傾向にあります。しかし,当教室は,複数の指導医による高度先進医療の環境下で,研修医・医員であっても,大学に居ながら研修病院並みの症例数が経験できるという特徴を持ちます。

後期研修プログラム

後期研修1年次(卒後3年目)

入院患者5~10名の担当医となり,指導医の下で検査,治療計画を立て,診療方法を習得します。
この時に眼科救急疾患への対応法も学びます。
眼科検査は採血やX線のオーダーのようにコンピューター入力すれば済むものではなく, 90%以上は,視力,屈折・矯正,視野検査,眼底撮影,斜視弱視検査等,全て自科で行います。 これらの特殊検査を習得し,患者に対し実践することによりその検査の意味を理解し,結果を評価・診断に役立てることができます。
細隙灯顕微鏡および倒像鏡による基本的な前眼部,眼底診察法に習熟し,様々な眼科診断機器の使い方を覚えます。
指導医の下で緑内障,網膜疾患のレーザー治療を施行します。手術機械のメカニズムを理解し,セットアップできるようにします。
手術は内眼手術を中心に助手に付き,イメージトレーニングを行うと伴に,ウェットラボで模擬眼を用い,手術練習を行います。
翼状片,睫毛内反症などの外眼部手術を執刀します。
地方会での症例報告と論文作成に取り組みます。

後期研修1年次(卒後3年目)

後期研修2年次

1年目に習得したことを発展させつつ,さらに高度な技術を学びます。前眼部や眼底の3次元解析装置,眼底の特殊造影検査法,眼病理,眼薬理などについて手技と理解を深めるよう指導を受けます。
指導医の下で白内障手術に部分的に参加します。
外眼部の手術を一人で完遂できるよう指導します。
レーザー治療の適応を理解し手技を一人で完遂できるよう指導します。
全国学会での症例報告と論文作成に取り組みます。

後期研修2年次を開く

後期研修3年次

白内障手術を安全・確実に執刀できることを目標にします。
白内障手術に関連した合併症に対して適切な判断・対処ができるよう指導します。
難度の高い内眼手術や,網膜剥離,硝子体手術の助手に付き,その手技を学びます。
国際学会での演題発表と論文作成に取り組みます。

後期研修3年次を開く

眼科専門医

眼科専門医受験のためには4年間眼科で後期研修を行う必要があります。しかしながら平成19年度より受験資格が一部変更になり、この後期研修4年間のうち当初2年間において、眼科専門医制度委員会で承認された研修施設で1年間以上の研修が義務付けられました。すなわち眼科専門医取得のためには眼科専門医が8名以上常勤し、専門医制度委員会で承認された眼科研修プログラムを遂行できる病院で研修する必要があります。当科は平成20年度の眼科研修プログラム施行施設として承認されました。

この4年間の卒後研修中に眼科手術50例以上、眼科に関する論文を筆頭著者として1編以上,および集談会以上の学会で2題以上演者として発表することが必要です。 当科在籍中に受験した医局員は,この難関の眼科専門医試験に今まで全員合格しています。また,受験時には,大学病院にいながら執刀した手術件数の多さに、他大学の先生からしばしば驚きの声が聞かれます。

学位

当教室では、本人の希望があれば、学位取得を強力にサポートします。
従来の大学院入学の他、社会人大学院で勤務医を続けながら論文博士を目指すことが可能であり、生活面での不安はほとんどありません。

留学先

学位取得後、海外への留学をサポートします。
後期研修3年目以降でも、希望があれば留学可能です。米国では、 Duke, Harvard, Michigan, Oklahoma, Boston, Wayne, Santa Barbara, UCLA、欧州では、London, Milan, Leubeck, Paris等の大学に紹介できますが、上記以外の大学も相談に乗ります。

主な研究テーマ

臨床研究

  1. 低侵襲硝子体手術手技の開発
  2. ラマン分光光度計による黄斑色素密度の生体測定法の開発
  3. 眼科手術によるQOV(クオリティー・オブ・ビジョン)改善効果に関する研究
  4. 非穿孔緑内障手術手技の開発と手術成績に関する研究
  5. 緑内障早期発見のための機能・形態検査法の確立
  6. 眼部悪性腫瘍の迅速確定診断法の確立

基礎研究

  1. 網膜光障害と活性酸素の役割:網膜光障害予防物質の研究
  2. 網膜虚血-再灌流障害の発生機序解明
  3. 細胞外マトリックスに関する分子生物学的研究
  4. 網膜毛細血管細胞の細胞生理
  5. 眼部腫瘍の分子生物学的研究

臨床研究と基礎研究の両者について精力的に取り組み、その研究成果を英文国際雑誌を中心に発表しています。 本人の希望があれば、いずれかのプロジェクトに参加し国内・国際学会や論文上で成果発表をすることが可能です。

研究会・学会発表

主たる国内学会および国際学会に常時演題を発表しています。 島根大学眼科同窓会学会、島根眼科研究会、島根緑内障研究会、島根冬期学術研究会、山陰眼科集談会(鳥取大学と交互に主催)の他に、臨床、研究者による講演会を不定期に開催しています。また、島根県は東西に長いため、年に数回、松江市と浜田市で県内眼科医会の先生方との症例検討、交流の場を広げています。

関連施設

松江赤十字病院、島根県立中央病院、出雲市立総合医療センター、出雲市民病院、斐川生協病院、平成記念病院、大田市立病院、町立奥出雲病院、飯南病院、加藤病院、六日市病院

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医局スタッフ
硝子体手術中
症例カンファレンス
 
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